靴屋で生まれるラブストーリー『シンデレラの靴、あります。』

【あらすじ】
主人公・羽鳥つばさは勤続2年半の会社をちょっとしたミスでクビになってしまった。その帰り道、ふて腐れて振り上げた足からはずみで脱げた靴が、柿島類に当たってしまう。謝罪のために羽鳥が駆け寄ると、柿島は突然、足に合うように羽鳥の靴のフィッティングを始めたのだった。シューフィッターという特殊な職業を主題においた、少し珍しい少女漫画。

【みどころ】
突然の出会いから始まる少女漫画は多くあるが、その相手がシューフィッターという職業についていて、出会いがしらに初対面の人の足に触れて、突然フィッティングをはじめるプリンスというのはなかなかいないのではないだろうか。そしててっきり、靴のことが大好きな残念なイケメンかと思いきや、柿島は「好きではない、仕事だからやっているだけ」と言い出すから面白い。思わずその理由が知りたくて夢中で読み進めてしまった。
柿島と彼の勤める靴屋のオーナー・沓野谷の過去のエピソードがまた切ない。羽鳥は亡くなった柿島の妹・碧海に声が似ているらしいのだが、その羽鳥が、

「靴をもらって嬉しかったのに、靴ずれなんかどうでもいいくらい幸せな思い出なんだからそれまで否定しないでよ」

と柿島に訴えるシーンが泣けた。羽鳥の存在によって少しずつ前向きに歩み始めた柿島と沓野谷の今後の精神的な成長が楽しみな作品である。

蛇足となるが、出会ったばかりの柿島が羽鳥に言った

「あなたのためのシンデレラの靴はきっと見つかります」

という台詞、なかなかに寒い台詞だと思うのだが、きっとイケメンだから許されているのだろう。タイトルとあいまって印象に残る台詞だった。

【作品データ】
・作者:藤井明美
・出版社:集英社
・刊行状況:1〜3巻(以下続刊)